東京都:ネットカフェ追われた人々…生活保護申請者はビジネスホテルに入れず、「三密」で劣悪な「無料低額宿泊所」に誘導→批判により一部方針変更

【UPDATE】ネットカフェ難民が案内されたのは”相部屋”の宿泊所→批判を受け、都が一部方針を変更【新型コロナウイルス】/HUFFPOST Nodaka Konishi

相部屋の施設で、マスクなし。咳をしている人も。

「ネットカフェを出ることになり、自治体に相談したら相部屋の施設に入ることになった。周りの人はマスクをしていないし、咳をしている人もいる。耐えられない」

生活困窮者の支援をしている一般社団法人つくろい東京ファンドには、元ネットカフェ難民たちから悲痛な声が寄せられている。中には一度ホテルに案内されてから、相部屋の宿泊施設に移るよう求められた人もいるという。

「ネットカフェを出されて野宿になり、ホテルに入れたと思ったらより環境の悪い宿泊所に案内される。絶望するでしょう」。つくろい東京ファンドの代表理事・稲葉剛さんは憤る。

背後に「貧困ビジネス」

東京都の調査によると、都内のいわゆる「ネットカフェ難民」はおよそ4000人。支援団体は緊急事態宣言が出される前の4月3日、都に対して緊急要望書を提出。感染リスクを考慮した対策をとるよう求めていた。

小池百合子都知事は4月6日の会見で、ネットカフェ難民が一時的に居住できる場を用意すると表明。都保護課によると、一時的な居場所として提供するホテル代や支援事業拡大などを合わせ、12億円の予算を計上している。

しかし都保護課によると、緊急事態宣言に伴う支援についても、これまで通り無料低額宿泊所などの活用が優先。定員が埋まって新たに入れない場合はホテルを活用する、という流れになるという。各区市にもこうした通知を出しており、相談を受けた各区の福祉事務所などは通知をもとに支援を行っているとみられる。 

しかし稲葉さんによると、無料低額宿泊所は「玉石混交」。個室が整備されているところもある一方で、ひと部屋に2段ベッドがいくつも置かれ、10人、20人という大部屋の施設もある。こうした劣悪な環境は「貧困ビジネス」と指摘されており、2020年4月から規制が始まった。ただ、3年間の猶予があり、いまだに狭い空間に多くの人が暮らす施設も残る状況だ。

感染予防のためにネットカフェに休業要請したにも関わらず、こうした環境の悪い宿泊所にも元ネットカフェ難民たちを案内している現状に、稲葉さんは怒りをあらわにする。

「従来の行政施策の枠組みにこだわりすぎている。今は緊急事態で、感染防止が重要。こうした宿泊所は人の入れ替わりも激しく、リスクが高い。危機感がなさすぎる」 

東京都は「問題ない。『三密』かどうかは判断できない」→抗議を受け方針を変更

都保護課は4月15日午後、ハフポスト日本版の取材に対し「無料低額宿泊所などは休業要請の対象になっていないため、案内することは問題ないと考えている」と回答。

相部屋の宿泊所の場合、厚労省が避けるべきとしている「三密」に当たり、案内するのは不適切ではないかという質問に対しても「国の方からも、宿泊所を閉じなさいという話は出ていない。なので都も、そこを使うなとは言えない。施設については感染症対策をきちんととるよう通知は出している。いわゆる『三密』に当たるかどうかはこちらで判断できない」とし、対応は変えない方針だ。

稲葉さんはこうした都の対応について「今しなければならないのは、環境のよくない宿泊施設の人口密度下げるよう動くこと。新たに住まいを求める人に対してはホテルを活用し、すでに入居している人からも申し出があれば移動を認めるなど、柔軟な対応をすべきだ」と指摘。「このままでは宿泊所に入るよりも路上の方がましだと考える人が出て、路上生活者が増える可能性もある」と危機感を訴えていた。

都はこうした抗議を受け、4月15日夕に方針を変更したと、4月16日のハフポストの取材に明らかにした。「人によっては宿泊所のような集団生活が難しい人もいる。相部屋は確かに好ましくない」とし、区市町村に対して個々の事情に合わせ、ホテルを含めた適切な施設に案内するよう通知。無料低額宿泊所でも、可能な限り個室で対応するよう求めたという。

【UPDATE 2020/4/16 12:00】

都保護課が4月15日の取材後に方針を変更。無料低額宿泊所では可能な限り個室で対応し、相談者の事情に合わせてホテルを含めた適切な施設に案内するよう通知を出したことが分かったため、加筆しました。

ネットカフェ追われた人々…ビジネスホテルに入れず、劣悪な「三密施設」に移る可能性も/弁護士ドットコムニュース(ライター・碓氷連太郎)

●生活保護申請者には「無料低額宿泊所」をあっせん

「東京都は半分はいいことをしたと思います。しかし半分はふざけるなと思います」

こう語るのは足立区議の小椋修平さんだ。

4月11日、小椋さんのもとに、足立区のネットカフェで生活していた20代の青年から連絡があった。彼は、都が確保したビジネスホテルに身を寄せていた。

小椋さんは13日、彼と一緒に足立区役所の福祉事務所を訪れて、生活保護の申請を手伝った。すると、職員から「生活保護受給者は無料低額宿泊所に入所してもらう」と言われたという。

そのとき、緊急事態宣言の期限である5月6日(4月17日現在)までビジネスホテルに滞在できるのは、貯蓄があるなど、生活保護を受給していない人に絞られていたことがわかった。

●劣悪な無料低額宿泊所も少なくない

無料低額宿泊所とは、無料もしくは低額で住まいと食事を与える施設のことで、NPO法人などの団体が運営している。

入居者を適正にあつかっている宿泊所も多いが、中には「生活保護者の自立支援」をうたいながら、生活保護費のほとんどを食費や滞在費と称して巻き上げるところも存在している。

複数人を相部屋に押し込めているのに、仕切りはカーテン1枚しかなかったり、個室でも壁が薄く、プライバシーが守られていないなど、劣悪な環境のところもある。

小椋さんが以前、視察に訪れた無料低額宿泊所では、6畳間に2段ベッドが2台も置かれ、そこで4人が生活していた。風呂も3日に1度しか入れない「典型的な貧困ビジネス」だったそうだ。

まさに究極の「三密空間」だが、パーテーションで仕切られている分、まだネットカフェのほうがマシと言えるかもしれない。

「生活保護者であっても、5月6日までは、東京都が確保したビジネスホテルに滞在しながら、仕事や部屋探しができるものだと思っていました。

しかし、生活保護者は、無料低額宿泊所や保護施設に収容するのが原則で、そこが定員オーバーになってようやくビジネスホテルに宿泊できることがわかったんです。

ネットカフェを追われた人のために、ビジネスホテルを借り上げたことは評価します。しかし、こんなカラクリになっていたとは・・・。『ふざけるな!』と言いたいです」(小椋さん)

「ネットカフェで生活していた20代青年の相談対応していて、週末は東京都が確保した緊急一時宿泊施設(ビジネスホテル)で宿泊。週明けに、足立区の福祉事務所に生活保護申請に同行すると、『(無料低額宿泊所)施設に入所してもらうことになります』という対応」

4月14日に小椋さんがツイッターでつぶやくと、「ネカフェのほうが安全」「これ酷い、人間扱いしてないよね」などの声があがった。

●声をあげて抗議したことで、状況が改善

そんな中で「怒りに体が震えている」という感情をあらわにしていたのは、貧困問題に取り組む稲葉剛さん(『つくろい東京ファンド』代表)だ。

「感染リスクを下げるためにネットカフェを休業したのに、これでは命のリスクがあがってしまうと危惧しました。緊急事態が起きているのに、東京都はあまりにも官僚的な対応ではないかと言いたいです」(稲葉さん)

4月14日、稲葉さんが都の福祉保健局に問い合わせたところ、「(生活保護受給者には無料低額宿泊所をあっせんするという)既存の制度・運用を変更するつもりはない」と言われたそうだ。

生活保護者を救護施設や更生施設、日常生活支援住居施設などに入所させることを記した生活保護法30条は、その2項で「被保護者の意に反して、入所又は養護を強制することができるものと解釈してはならない」と触れているにもかかわらずだ。

同団体をはじめ支援者たちが都に抗議すると、「一義的には保護施設や無料低額宿泊所を活用すること」自体は撤回されなかったものの、「本人の心身の状況を見て無料低額宿泊所に入ることが困難と認められれば、ビジネスホテルの活用を認める」ということが、4月15日夕方になって各区市町村に通達された。

また、無料低額宿泊所に入居させる場合でも「可能な限り個室で」といった感染予防対策を取ることも併せて連絡しているという。

「中途半端ではありますが、声をあげて抗議したことで状況が改善されました」(稲葉さん)

●「もっと大変な人がいる」と追い返される

ただ、稲葉さんによると、生活保護を受給していなかったとしても、都内在住歴が6カ月以上ないと、都が借り上げたビジネスホテルに入れないことがあるという。

都は、ネットカフェなどで寝泊まりしながら、不安定な就労をしている人をサポートする『TOKYOチャレンジネット』を設置している。

都内在住6カ月以上の人がビジネスホテルに入居するには、この『TOKYOチャレンジネット』や都内各自治体の福祉事務所を介して申し込む必要がある。しかし、申し込んだところで、入居できる保証はないという。

「都内に6カ月滞在していた場合でも『その証明としてネットカフェの領収書や、Suicaなど、電子マネーの履歴を見せてください』と聞いているそうです。しかし、レシートを捨ててしまったり、電子マネーを使っていないことから証明できない人もいます。そして都内に6カ月滞在していない人たちが相談に行くと、『ネットカフェがある自治体で、生活困窮者自立支援窓口に相談してください』と追い返されることがあります」(稲葉さん)

また、別の区の窓口に相談すると「もといた区の役所に行ってください」と言われ、対応されないこともあると稲葉さんは言う。

「『つくろい東京ファンド』のシェルターで一時的に保護した人が、もともと滞在していたのとは別の区に相談に行ったら対応してもらえなかっただけではなく、『もっと大変な人はいるし、民間団体が支援してるのだから』と追い返されてしまいました」(稲葉さん)…

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